来月9月、とあるイベントで「食と発酵」の魅力を語る模擬授業を担当することになりました(詳細は後日宣伝するやも)。そこで、自宅に積んであった本たちを慌てて取り出し、あちこち乱読中です。今回は、そのラインナップをご紹介します。
なんともお恥ずかしい話ですが、読了済なのは7冊中わずか2冊……。後日、ちゃんとしたレビュー記事を書くかもしれませんし、書かないかもしれません(笑)。
どの本もパラパラ眺めただけでも興味深く、今回は単なる忘備録としてリストアップしておきます。

中村桂子 著, 『日本の「食」が危ない!—生命40億年の歴史から考える「食」と「農」』(幻冬舎新書, 2025年)
中村桂子さんは「生命誌」という学際的研究分野を切り拓いた生命誌研究者で、JT生命誌研究館の名誉館長です。この本で私は初めて「生命誌」という視点に触れ、それまで持ち合わせていなかった考え方に強く感銘を受けました。
◎「生命誌」とは
生命が誕生してから現在に至るまでの“歴史物語”を、ゲノム情報や発生過程、進化のつながりを手がかりに読み解く研究領域です。単に生物を機械のように扱うのではなく、「38億年の生物史」という壮大な叙事詩として生命を捉え直す──そんなアプローチが特徴です。
◎印象に残ったキーワード
フラット&オープン:すべての生物は同じ祖先から枝分かれし、上下や優劣の関係は本来存在しない。科学が明らかにした生きもののありようから現状を見直そうと考えた時、「格差」と「分断」がないということ。生きものの世界は「フラットでオープン」なのだという考え方。
これらを軸に、「下等・高等といった概念への疑問」「競争社会への鋭い問いかけ」が展開されます。抽象的な哲学と具体的な食・農の現実をバランスよくつなぎ、たとえば「なぜお米の価格が上がっているのか?」といった身近な問題から気候変動対策を考える道筋を示してくれます。
◎共感したポイント
環境問題はどうしても“他人事”に感じがちですが、私たちが日々口にする「食」や、それを支える「農」から入っていくことで、一気に自分事として捉え直せる──という投げかけに深く頷きました。
まだ自分の言葉でうまく説明できないので、再読必須です。いずれ改めて、詳しい紹介記事をまとめたい一冊です

お次はこちら
小倉ヒラク著,『 発行文化人類学,』 角川文庫, 2022(加筆修正版)
この本はですね、2年ほど前に購入し、今回は2回目の読書です。著者の小倉ヒラクさんは、「発酵デザイナー」というユニークな肩書きを持つ方。
大学時代に文化人類学を学び、バックパッカーとして世界各地を巡る中でさまざまな文化に触れ、デザインの勉強も。やがて発酵に関わるデザイン(確か酒蔵のPRから始まったと記憶していますが、もし違っていたらすみません)を手がけるようになったそうです。その後、自然な流れで発酵学を学び、文化人類学、発酵学、デザインの知見を融合させた結果、「発酵デザイナー」という肩書きが生まれたとのこと。
読んでいると、発酵学(食)と社会学(地域文化)は切っても切れない関係にあるのだと気づかされます。
前回読んだのは二年前で細部は忘れてしまっていましたが、文章が親しみやすく非常に読みやすいので、発酵や文化人類学に初めて触れる方にもおすすめです。哲学的なテーマにも踏み込みつつ、なんとも言葉にしがたい不思議な面白さをもった一冊です。
2回目の読書ですが、ほとんど内容を忘れているので新鮮な気持ちで読み進めております。
◎きのこと発酵
私はきのこ由来の素材研究をしているのですが、実はきのこも発酵と深い関わりがあります。
例えば、きのこはリグノセルロース系バイオマスを酵素で分解し、糖類を生成します。また、私たちがきのこを食べた後、腸内細菌がきのこの食物繊維を分解し、短鎖脂肪酸などの有用成分を生産します。こうして「きのこ→腸内細菌→人間の健康」という発酵的なつながりが生まれるのです。
◎酢酸菌とナタデココ
以前、私はバクテリアセルロース(いわゆるナタデココ)を研究していました。ナタデココは酢酸菌が生産するセルロースナノファイバーでできており、実は“菌の分泌物”を私たちは食べているのです(どうか気持ち悪がらないで…!)。
発酵と腐敗の違いは、ざっくり言えば「人間にとって有益かどうか」。そう考えると、人間ってずいぶん勝手だなぁと思いつつ、美味しい発酵食品には抗えません。(もちろん、学術的にはもっと厳密な定義があります。)
※この先に紹介する本はまだ読了していないため、また後日ご紹介します。読みかけの本たちを、備忘録としてここにメモしておきます。

小倉ヒラク著, 『オッス!食国ー美味しいにっぽん』角川書店,2023

白石優生 著, 『タガヤセ!日本「農水省の白石さん」が農業の魅力教えます』河出書房新社, 2022

石川伸一 著, 『料理と科学のおいしい出会い 分子調理が食の常識を変える』, DOJIN文庫, 2021文庫化

ジャック・アタリ 著, 林昌宏 訳, 『食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか』, プレジデント社, 2021
自身の研究の話も、じっくりまとめてから…と思いつつ、つい先延ばしにしてしまっています。
気長にお待ちいただければ幸いです。

